シナリオ

ミニシナリオ「僕の愛したウルトラマン」

#0331テーマ「お花見」

タイトル「僕の愛したウルトラマン」

登場人物
・本橋拓郎(42)…隼太の実父。
・岡倉隼太(11)…小学6年生。

○ 公園
  桜の花で有名な、市内の公園。
  今、まさに桜祭りの真っ最中。
  大勢の人手で賑わっている。
  広場には特設ステージがあり、ウルトラマンショーが行われている。
  そのショーを遠巻きに見ている、本橋拓郎(42)と岡倉隼太(11)。

拓郎「もっと近くへ行こう。ここからじゃ遠くて見づらいだろう」
隼太「結構です。夢中になるほどの内容じゃありませんから」
拓郎「そ、そうか……」
隼太「はい」
拓郎「(ステージに視線を戻して)や、ウルトラマン、ピンチだよ。知ってるか? あの怪獣、ゴモラって言うんだぞ。ゴモラはやっぱり強いなあ」
隼太「生け捕りにして、万博に展示しようとしたことが、そもそもの間違いだったんです」
拓郎「ん?」
隼太「おとなしく眠っていただけなのに。そのゴモラを生きたまま運ぶだなんて、これは人のエゴです」
拓郎「ヒトノエゴ?」
隼太「実際のテレビ放送で、ゴモラは関西圏経済を壊滅状態にしました。たとえば大阪城の破壊。復興には当時の価格で、最低でも350億円はかかるでしょう」
拓郎「え? え?」
隼太「人口密集地域を壊滅させたと言えば、他には、代表的な例で、ペスターによる京浜工業地帯の破壊が挙げられます。損害額は主なものを加算しただけでも、およそ3兆円と言われています」
拓郎「……へえ」
隼太「あくまでも、想定の範囲内での計算ですけど。人的補償は含まれていませんし」
拓郎「ウルトラマンって、ただ強いだけじゃないんだな」
隼太「そういう一面もあるということです」
拓郎「……場所、変えるか」
隼太「おまかせします」

  二人、ステージを離れ、公園の奥へ進んでいく。
  屋台が並んでいる。

拓郎「お腹、空いただろう。なんでも好きなもの食べていいぞ」
隼太「遠慮しておきます。家に帰れば、食事が用意されていますので」
拓郎「……じゃがバターとか、いい匂いするけど」
隼太「どうぞ、僕に気を使わず。食べたいものがあれば食べてください」
拓郎「う、うん……」

  二人、さらに移動し、芝生の上に腰を下ろす。

拓郎「どうだ、学校は楽しいか?」
隼太「義務教育ですからね。楽しむ楽しまないということは、あまり関係ないような気がします」
拓郎「まあ、そうだな」
隼太「はい」
拓郎「勉強と体育じゃ、どちらが好きだ?」
隼太「難しい質問ですね」
拓郎「そうか?」
隼太「比較する判断基準が異なります。一概にどちらと答えることはできません」
拓郎「……そういうことね」

  風が吹き、桜の花びらが舞う。

隼太「……あの」
拓郎「うん?」
隼太「さっきの話の続きですが」
拓郎「なんだ?」
隼太「ウルトラマンの話」
拓郎「ああ」
隼太「だから僕の名前は『ハヤタ』なんですか? ハヤタ隊員にあやかっててこと?」
拓郎「それがすべてという訳ではないが……」
隼太「もし、それが本当だとしたら、ずるいよ」
拓郎「ずるい?」
隼太「付けるだけ付けて、いなくなって」
拓郎「……」
隼太「僕は両親に『親』をやってもらいたかった。ただそれだけ」
拓郎「……そのことは、申しわけなく思っている」
隼太「八年ぶりの再会と言われても、正直、よく分からない。ピンとこないもん」
拓郎「ああ、そうだな」
隼太「今日は、母さんの顔を立てるために来ました」
拓郎「うん。それでいい」
隼太「そしてこの先、また会うことはないと思う」
拓郎「……」
隼太「僕だって欲しかったよ。ウルトラマンの面白さを教えてくれる人が」
拓郎「……」
隼太「桜の花、三人で見たかった」     

  了


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