シナリオ

ミニシナリオ「エージェント・ウォー」

#0623テーマ「デート」

登場人物
・谷口和希(36)…地方公務員
・水元奈央(32)…OL

○ 都内にある喫茶店・店内(午前)
  レトロな雰囲気の店内。
  朝から恋人同士でほぼ満席。
  谷口和希(36)と水元奈央(32)が向かい合って座っている。
  二人とも、視線を落としたまま無言。

奈央「(ストローをくるくる回している)」
和希「……」
奈央「あの」
和希「はい」
奈央「そろそろ、次、喋ってもらっていいですか? 耐えられないんだなあ、私、こういう空気っていうか、重苦しい沈黙」
和希「ええ、すいません。ですから先ほどお話しした通り、今日、俊彦は、どうしても抜けられない仕事ができまして……それでこうして私が代わりに……」
奈央「聞きました。その話なら何度も聞きました」
和希「だったら」
奈央「私が聞きたいのはその先なんです。いいや順番から言うと後かな。とにかくあなたのご友人の、俊彦さん? が、うららとのデートをすっぽかしたという事実。これをどう受け止めているのかってこと」
和希「すっぽかしたって、あなた。仕事が入ったんだからしょうがないじゃないですか」
奈央「出たよ。仕事仕事仕事。じゃあ、俊彦さんは、うららより仕事を選んだということですね。そしてその罪滅ぼしだか何だか知らないけど、代わりにあなたを寄こしたと」
和希「とげがあるなあ、その言い方。お言葉を返すようですが、あなた、うららさんではないですよね?」
奈央「私はうららの友人です」
和希「だったらお互い様じゃないんですか?」
奈央「お互い様?」
和希「どうして、うららさんじゃなくて、あなたがここにいるんですか?」
奈央「またその話させますか。聞きたいですかその話。言っておきますけど長いですよ。かなりの量ありますよ」
和希「いいです、結構です。風邪を引いたということで理解してますから」
奈央「簡単に風邪って言わないでください。うららが今日のこの日を、どれだけ楽しみにしていたか、あなた知らないでしょう。40度ですよ。季節外れのインフルエンザですよ。それでもうららは、この場にやってこようとしたんです。分かります? そういう乙女の気持ちが」
和希「乙女って」
奈央「あ、今、軽くバカにしましたね」
和希「してませんよ」
奈央「したでしょ。鼻で笑ったでしょ」
和希「笑ってませんって」
奈央「全然、反省しているように見えないんだよなあ。誠意が伝わってこない」
和希「誠意って何ですか?」
奈央「誠意は誠意です。ニヤニヤちゃらちゃらして、ほんと不愉快です」
和希「どうして初対面のあなたに、そこまで言われなくてはいけないんですか。今日が何曜日だか、あなたご存知ですか?」
奈央「はあ? 日曜日に決まっているじゃないですか」
和希「そうです。日曜日です。公務員にとっては貴重な貴重な休日です。その休日の午前中にですよ。本来ならまだ寝ていてもおかしくない時間にですよ。こうして、やってきて、頭下げているじゃないですか」
奈央「立派でお忙しいご友人の代わりに」
和希「ええ、そうです。仰る通りです」
奈央「だから、そんなあなたを通して、俊彦さんの誠意が伝わってこないと言っているんです」
和希「言っていることが無茶苦茶ですよ。うららさんだって、あなたを代わりに寄こしたんでしょう。同じじゃないですか」
奈央「あなた、インフルエンザの女性に、はいつくばってでも来いと言うんですか?」
和希「そんなことは言ってません。というか、僕が責めらている理由が分かりません。ニヤニヤちゃらちゃらって、こっちの方が不愉快です。失礼な」
奈央「私はね、ここへ来て、俊彦さんに確認したかったんですよ。うららの気持ちをどう受け止めているのかってことを」
和希「好きに決まっているじゃないですか」
奈央「ふん、どうだか」
和希「ふんって」
奈央「好きなら好きって、はっきり言えばいいじゃないですか」
和希「雰囲気で察して下さいよ」
奈央「女性は、言葉で確認したいんです」
和希「言ってますよ、言ってます。我々の知らないところでね、俊彦とうららさんだけの世界があって、そこで、好きだのなんだのとささやいていますよ」
奈央「友情ですか? それ。男が男をかばう青春ごっこですか? いい歳した大人が」
和希「あなたこそ、うららさんの何が分かるって言うんですか? そもそもおかしくないですか? 私たち、言わば代理人ですよね? 俊彦とうららさんの」
奈央「はい」
和希「その我々が、どうして言い争わなくてはいけないんですか? 事情を説明し合って、終わりでいいじゃないですか」

 まだまだ終わらない


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