シナリオ

ミニシナリオ「フルカウント」

#0413テーマ「改札口で、元カレ、元カノに出会ったら…」

登場人物
・入江真琴(20)…町工場勤務。
・川澄誠(20)…大学生。真琴の幼なじみ。

○ 小野里駅・ホーム(夕)
  渓谷鉄道の終着駅の一つ手前の駅。
  二両編成の列車が到着する。
  一人の男性がホームに降り立つ。
  川澄誠(20)である。
  赤いキャップをかぶり、大きめのカバンを抱えている。

○ 同・改札口(夕)
  無人の改札口。
  誠、ポケットから切符を取り出し、設置してある箱の中に入れ、改札口をくぐる。
  改札口の外側にいた、入江真琴(20)が、声をかける。

真琴「お、偉い偉い」
誠「! 何してんだ、お前」
真琴「お父さんの代わり。無賃乗車している
客がいないか見張ってる」
誠「監督は?」
真琴「お父さん? 明日の準備を手伝うから、忙しいんだって。という口実で、昼間から酒飲んでるんだろうけど」
誠「おいおい」
真琴「いいの、いいの。この時間にお客さんなんて、いないんだから。あ、でも一本前の電車で、やっちんとベラが帰ってきた」
誠「うわ、懐かし。二人とも元気だったか?」
真琴「少なくとも、今の誠よりはね」
誠「……」
真琴「何か、言うことないの?」
誠「……ただいま、帰りました」
真琴「お帰りなさい」
誠「っていうか、ダメだろ、このシチュエーションは」
真琴「え?」
誠「え? じゃないよ。わざとだろう、ここにいるの。なに? お前、どこまで話聞いてるの?」
真琴「話?」
誠「……俺の肘のこと」
真琴「ああ、ね。なんかすごい勢いで、おばさんがうちの母さんに話してた」
誠「ダダ漏れじゃん」
真琴「大丈夫よ。ああ見えて、二人とも口は堅いから」
誠「説得力がまるで感じられないんですけど」
真琴「説明して」
誠「ん?」
真琴「ちゃんと、誠の口から聞きたい」
誠「……」
真琴「私には聞く権利あると思うんだけどな」
誠「……それは、幼なじみとしてのアレですか? それとも……」
真琴「両方です」
誠「!」
真琴「嫌なのよ。モヤッとしたまま、明日の成人式を迎えるのが」
誠「……」
真琴「なんで、怪我した時に話してくれなかったかなあ」
誠「……」
真琴「突然、連絡も取れなくなって。私がどれだけ心配したか分かる? これが俗に言う自然消滅ってやつですか?」
誠「……言えないだろ、真琴には」
真琴「どうして?」
誠「野球やります。東京行きます。迎えに来るまで待っててくださいとかなんとか、偉そうなこと言って」
真琴「うん」
誠「それで怪我しました。ダメになりましたとか、言えないだろ」
真琴「それでも私は待ってたよ。はあ? なにその小さなプライド。そんなに私が信用できなかったの?」
誠「小さくねえよ。小さいとか言うなよ」
真琴「だったら、納得できるように説明して」
誠「説明、説明って言うけどさ……まだ手術して半年も経ってないんだぞ。この先、キャッチボールができるかどうかも分からない。俺だって、気持ちの整理がついていないものを、どうやって説明するんだよ!」
真琴「そのままよ。今の感情、そのままぶつけてくれれば、それでいいじゃん」
誠「真琴に愚痴って泣きついて、慰めてもらえってか」
真琴「そうよ!」
誠「できねえよ!」
真琴「だから小さいって言ってるの!」
誠「小さくねえよ! 真琴と野球は小さくねえよ!」
真琴「……」
誠「でかすぎるんだよ、俺にとっては。真琴も。野球も」
真琴「……負担ってこと?」
誠「違う」
真琴「重たいってことでしょ?」
誠「そうじゃないよ」
真琴「後悔してるんだ、私とのこと」
誠「違うって」
真琴「ずっと、幼なじみのままでいればよかった? お隣さんどうしで、家族どうしでお付き合いしていればよかった?」
誠「どうしてそうなるんだよ」
真琴「本当は笑って迎えるはずだったの。でもその赤い帽子見たら、色んな事思い出しちゃったんだもん。考えちゃったんだもん」
誠「……」
真琴「誠が引っ越してきた時のこと。いつも赤い帽子をかぶってたこと。お父さんとキャッチボールしてた時のこと」

続く(かもしれない)


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