シナリオ

ミニシナリオ「トリハダ」

#1221テーマ「楽屋」

登場人物
・吉井景子(22)…「チーム・ワン」部長。
・楠木亘(22)…「チーム・ワン」副部長。
・藤本靖代(22)…「チーム・ワン」部員。
・榊奈津江(21)…「チーム・ワン」部員。

○ 国立文化センター・入り口
  「集団行動全国大会」と書かれた看板が立っている。

○ 同・出演者控室・外
  長く続く廊下の両脇に、大小の控室が並んでいる。
  大部屋の控室の入り口に、「川名体育大学、チーム・ワン様」と書かれた用紙が貼ってある。

○ 同・内
  50名強の部員が、室内で待機している。
  みな、緊張した面持ちで言葉も少ない。
  外から扉がノックされる。
  副部長の楠木亘(22)が扉を開ける。
  部長の吉井景子(22)がA4サイズの紙を一枚持って入ってくる。

景子「お待たせ。みんな順番出たよ」

  景子に部員たちの視線が集まる。

景子「私たちは、最後から二番目。つまり日
医大の前ってことになる」

  どよめく部員たち。

亘「ラッキーじゃん。俺たち、最高の演技してさ、あいつらにプレッシャーかけてやろうぜ」
景子「亘の言う通り。もういい加減さ、シルバーコレクターなんて名前、卒業しようよ。今年こそは、私たちがてっぺん取るよ」

  活気づく部員たち。

景子「そこで、メンバーの編成なんだけど」

  再び、景子に部員たちの視線が集まる。

景子「靖代と奈津江、チェンジ。本番は奈津江でいくことにしたから」
靖代「!」
奈津江「!」
景子「他はいつもの練習通り。分かったら準備して」
亘「ちょいちょいちょいちょい。何で二人をチェンジするかな」
景子「言ったでしょ。てっぺん取るって。そのためのベストなメンバーを選んだつもりだけど」
亘「ベストなメンバーなら、靖代だろ。練習量だって、靖代の方が多いんだから」
景子「(靖代に向かって)右の足首でしょ。怪我しているの」
亘「えっ?」
靖代「……」
亘「えっ? そうなの? 靖代、足首怪我してるの?」
靖代「……」
亘「まじで? 俺、全然気がつかなかった。っていうか、みんな知ってた」

  顔を見合わせる部員たち。

景子「じゃ、そういうことで」
亘「だからちょっと待てって。誰も気がつかないほどの怪我なんだから、問題ないだろ」
景子「奈津江は知ってたでしょ」
奈津江「!」
景子「いつも私の隣で見てたんだ。靖代の様子がおかしいことくらい、分かってたよね」
奈津江「……はい」
靖代「!」
亘「奈津江、なんで早く報告しないんだよ」
奈津江「すみません」
亘「すみませんじゃないよ。どうするんだよ」
靖代「あの」
景子「なにか?」
靖代「私にやらせてください。みんなに迷惑をかけるようなことは絶対にしません。約束します」
景子「靖代、集団行動の意味ってなんだっけ?」
靖代「……」
景子「集団行動の目的、説明して」
靖代「……集団行動とは」
景子「集団行動とは?」
靖代「同一の目標の下に、規律ある行動を取ることです」
景子「正解。その通り。じゃあ、今のあなたにその資格があるのかな」
靖代「……」
景子「規律ある行動、取れる?」
靖代「……」
亘「その辺にしとけよ。本人が出来るって言っているんだから、大丈夫だろ。心配することなんてないだろ」
景子「可能性の問題を言ってるの」
靖代「……この大会が終わったら、引退だし」
亘「そうだよ。靖代にとっては最後の大会なんだぞ。そっちの問題を考えろって」
景子「私たちは、いつから思い出作りの集団になったの? 思い出が欲しければ、他所でやんなさいよ」
亘「景子! いい加減にしろ」
景子「靖代の怪我、本当は亘だって知ってたんじゃないの?」
亘「なっ!」
景子「二人がどこでなにしようと、そんなことはどうでもいいの。でもね、この大会が終わって引退するのは、靖代だけじゃないんだよ。他のメンバーだって同じなの。分かる?」
靖代「……」
景子「あなただって、昨年、本番前に尾本先輩からポジション奪ったじゃない。それはあなたが必死に練習したからでしょ」
奈津江「あの……」
景子「なに?」
奈津江「私……出たいです。靖代先輩の代わりに、ステージに立ちたいです」(続く?)


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