シナリオ

ミニシナリオ「タイム・イズ・ナウ」

#0411テーマ「時計」

登場人物
・古澤亮平(34)…法律事務所の職員
・植松夏希(26)…派遣社員
・杉山美和(31)…亮平の同僚で恋人

○ スコラリー法律事務所・室内
  早朝の事務所内。
  植松夏希(26)が、観賞用の植物に水をあげている。
  古澤亮平(34)が飛び込んでくる。
  スーツはよれよれ。

夏希「おはようございます」
亮平「……おはよう。早いね」
夏希「仕事がまだ残っているので。残業よりは早出かなって」
亮平「そう……あの」
夏希「はい」
亮平「昨夜のことだけど」
夏希「はい」
亮平「なんというか、俺、お酒飲めないのに、所長に無理やり飲まされて、それで酔っぱらって終電逃して、そこから先、あまり記憶にないんだけど……植松さんと、その……」
夏希「はい、ヤリましたよ。道玄坂のホテルで」
亮平「ですよね。ヤっちゃいましたよね。あはは……ふう、えっと、この度は私の不徳のいたすところにより、植松さんに多大なるご迷惑をおかけしたことを―」
夏希「待ってください。もしかして謝ろうとしてますか?」
亮平「だって、責任は俺にあるわけだし」
夏希「責任? なんの責任ですか? まさか一度ヤッただけで、結婚とか言い出さないですよね」
亮平「それは、ない。それはないです。申し訳ないけど」
夏希「だから、なんで申し訳なくなるんですか? 私だって子どもじゃないんだから、自分のしたことくらい、分かってますよ」
亮平「そう……?」
夏希「社内恋愛している会社の先輩と、お酒の力を借りてヤっちまいました。それ以上でもそれ以下でもないです」
亮平「え? 知ってたの? 俺と美和がつき合ってるって」
夏希「バレないと思っていたんですか?」
亮平「まじかあ」
夏希「心配しないでください。誰にも言いません。だって私は、社内恋愛している会社の先輩と、一回ヤっただけの女ですから」
亮平「……」
夏希「(亮平のネクタイをしめ直しながら)でも、二人は小さな共犯者」
亮平「……」

  杉山美和(31)がやってくる。

美和「おはようございます」
夏希「おはようございます」
亮平「……おはようございます」
美和「なに、二人とも早いじゃない。てっきり私が一番乗りかと思ってたのに」
夏希「仕事がまだ残っているので。残業よりは早出かなって」
美和「同じく。昨日の所長の誕生日パーティーがね、余計だったよね」
夏希「ほんとですよ」
美和「外国人は、どうしてああもパーティー好きかな。(亮平を見て)なに、どうしたのボーっとして」
亮平「いやあ、何でもない」
美和「昨夜、もしかして泊まった?」
亮平「えっ?」
美和「事務所に。だって、スーツはしわくちゃだし、目の下にはクマができてるし。髭も剃ってないんでしょ」
亮平「そうそう。事務所にね。うん」
夏希「びっくりしましたよ。朝来たら、ソファの上に人がいるっと思って。よくよく見たら古澤さんだったんですけど」
美和「終電逃したの?」
亮平「そんなとこ」
夏希「美和さん」
美和「なあに?」
夏希「この腕時計、見覚えあります?」

  夏希、ポケットから腕時計を取り出す。

亮平「!」
夏希「知らないうちに私のカバンに入っていて。誰かが間違えたんですかね」
美和「ふうん、とりあえず私、預かっておこうか」
夏希「お願いします。私、お手洗いに行ってきます」

  夏希、腕時計を美和に手渡し、事務所から出ていく。

美和「ちょっと。なんで、あんな女のカバンに、私のあげた腕時計が入っているのよ」
亮平「……なんでだろうね」
美和「で、昨夜はどこに泊まったの? 心配して何度も電話したのに」
亮平「え?」

  続く(かもしれない)


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