雑記

2012を振り返る(3)writing

シナリオを書くという意味では、難産な1年でした。

結局、長編ものは1本しか書けなかったし。

それでも
毎回、ゼミで課題が出るたびに、自分ルールを作って
勝手にハードルを上げていたのですが
それが良かったのか悪かったのかは別として
作風に変化の兆しがみられたことだけが救いのような気がしています。

わずかとはいえ
今年蒔いた種が、来年少なからずたわわな実をつけますように。

「毛皮レボリューション」

登場人物
・近藤(48)ホステスに貢ぐサラリーマン
・松下(21)アルバイトの警備員

○ 某デパートの警備事務所(夕方)
  それほど広くない部屋には、デスクやパソコン類が所狭しと並んでいる。
  真新しいモニターには、店内の様子が映し出されている。
  お客の近藤(48)と、アルバイト警備員の松下(21)が、向かいあってイスに腰  掛けている。
  穏やかな表情で松下を見つめる近藤。
  松下は困ったような顔で、半分うつむいている。

近藤「だからね、松坂さん」
松下「松下です」
近藤「あなたはまだ若い。だからこそ視野をもっとグローバルに持たないと」
松下「はあ」
近藤「例えばアジアをご覧なさい。野良犬や野良猫だけで、年間200万匹も殺され ているんです。中国なんて酷いものですよ。野良犬や野良猫は生きたまま吊るさ れ、まばたきしているに関わらず毛皮を剥がされていく。こんな残酷なことがまか り通るだなんて許せますか?」
松下「許せないですね」
近藤「しかも、これらの毛皮は、ラビットやミンク、フォックスとして輸出されていま  す。つまりは贋物として扱われているんです。ここまでくると言葉もありませんね」
松下「まあ」
近藤「だからこそ、我々は立ち上がらなければいけないんです。松山さん」
松下「松下です」
近藤「あなたなら、どうしますか?」
松下「いやあ、そう言われましても……」
近藤「小さなことで構わないのです。身の周りのできることからで。私に言わせれ  ば、全裸で抗議デモしたところで、喜ぶのはマスコミだけでしょう。単なるパフォー マンスですよ。あれで犬や猫が救われるとは思えないな」
松下「そういうものですか」
近藤「そのための革命です。規模は小さくて地味で構いません。むしろその方が効 率がいい。ここまでの私の話はご理解いただけましたか?」
松下「なんとなくは」
近藤「それでは、これで失礼します」

  近藤、イスから立ち上がる。

松下「ちょっと待って下さい」
近藤「まだ何か?」
松下「それとこれとは、話が違う気がするんですけど……」

  近藤、イスに座りなおす。

近藤「例えばカナダをご覧なさい」
松下「ずいぶん飛びましたね」
近藤「グローバリゼイションです。カナダに生息するアザラシは、生きたまま殴られ て殺されているのです。しかも狙われているのは、生後間もない赤ちゃんアザラ シ。信じられますか?」
松下「えっと……」
近藤「ゴマちゃんだの、タマちゃんだのと持ち上げられているのは日本だけです。  美しきかなニッポン人よ。そして私はニッポン人です。あなたも同じニッポン人。ね え、幕ノ内さん」
松下「松下です」
近藤「今、少しイラっときましたね?」
松下「いえ」
近藤「本当は?」
松下「若干」
近藤「あなたは実に正直者だ。今時の若者には珍しい。こんなところでアルバイト  をしているのがもったいない。今すぐ扉を開けてお家に帰りなさい。私は右に。あ なたは左に」

  近藤、再びイスから立ち上がる。

松下「(制して)いやいやいやいや」
近藤「(歌いだして)白ヤギさんからお手紙着いた。黒ヤギさんたら読まずに食べ  た……この歌の本当の意味をご存知ですか?」
松下「知りません」
近藤「紙を食べるのは、ヤギも羊も一緒。それじゃあ」
松下「まったく意味が分かりません」
近藤「私が手にしているものは何ですか?」
松下「ファーのマフラーです」
近藤「羊の毛ですよ。肉は食用として売られている。言わば残りものです。それを  捨ててしまうなんて、美しきニッポン人として納得できますか?」
松下「だから、こうして売り物として陳列されているんじゃないですか。あなたのして いることは立派な犯罪です」
近藤「不買運動と呼んでください。これこそ誰にでもできるレボリューションです。さ あ、そろそろ時間だ。ルナちゃんが僕の到着を待っている」
松下「だから、まだダメですってば」

  扉が開き、警官が入ってくる。

松下「お疲れ様です」 

      了


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