落語

権助提灯(ごんすけちょうちん)

$こうたろう.com

久しぶりに、シナリオ公開します。

ということで、先日もちょっと触れましたが
前回のゼミで書いた、ミニシナリオです。

テーマは「雨のラブストーリー」。
お題の落語とは
二股をかける、かけられるという強引な共通点しかありませんが
ま、興味があれば、どうぞ。

「雨天決行」

登場人物
・小沢成美(28)…OL。明彦と不倫中。
・杉浦洋平(29)…同期。成美が好き。
・三上明彦(36)…三上の上司。
・三上恵里(32)…明彦の妻。
・三上綾香(6)…明彦と恵里の一人娘。

○ 成美の部屋・室内(夕)
  土曜日の夕方。
  中央線沿線沿いにある、ワンルームタイプの賃貸マンション。
  二人分の料理の下ごしらえがしてある。
  外では、雷の音が鳴り響いている。
  小沢成美(28)の携帯電話が鳴る。
  成美、嬉々として電話を手に取るが
  着信画面を見て、落胆する。電話に出て。

成美「はい、もしもし」
洋平の声「おっす! 俺俺。洋平」
成美「……なに」
洋平の声「今、家か? 家だよな? 週末暇してるもんな。よし、飯食いに行こう!」
成美「はあ?」
洋平の声「晩飯だよ、晩飯。夕ご飯」
成美「なんで、私があんたと一緒に夕ご飯食べなきゃいけないのよ」
洋平の声「だって、一人で食べるより、二人で食べる方が美味いだろ」
成美「相手によります。それに私先約がありますから」

  と言って、キッチンを見つめる。

成美「急に電話してきてね、わけのわからないこと言わないで。じゃあね」

  成美、電話を切る。
  大きな雷の音が一つ鳴る。
  そして雨が降り出す。
  成美の携帯電話にメールが届く。
  画面には三上明彦の文字。
  「ゴメン、少し遅れそう」と書いてある。
  「気をつけて」と返信する。
     ×  ×  ×
  時計の針は20時を過ぎを指している。
  キッチンの料理にはラップがしてある。
  成美、ソファで横になりながら、テレビのチャンネンルをいじっている。
  テレビ画面のテロップに交通情報が流れてくる。

  「雷雨による影響で、JR、私鉄共にダイヤの大幅な乱れ」

  携帯電話に明彦からメールが届く。

  「ゴメン、電車が遅れてる。今夜は無理っぽい。また連絡する。お誕生日おめでとう」と書いてある。

成美「まじっすかあ」

  キッチンの料理に目をやる。

  成美「気にしないで。ありがとう」と返信する。
  雨の音、いっそう激しくなる。

○ 洋平の部屋・室内(夜)
  1Kの畳の部屋。
  雨が激しく窓を打ち付けている。
  テレビ画面を見ていた、杉浦洋平(29)の後ろ姿。
  洋平、おもむろに立ち上がる。

○ JR国分寺駅・南口(夜)
  駅前のロータリーに、一台のタクシーが停まる。中から成美が出てくる。
  急ぎ足で、階段を駆け上がり、改札口へ向かう。手には二人分の傘。

○ 同・改札口(夜)
  成美、少し離れた位置から中の様子を伺っている。
  改札を出てくる人込みの中に、明彦の姿を見つける。
  大型のトランクを引きずっている。
  明彦の元へ向かおうとしたその時、小さな女の子が明彦の足元に抱きつく。
  明彦、その少女、三上綾香(6)を抱き上げる。
  次いで、一人の女性、三上恵里(32)が現れる。
  三人は軽く言葉を交わし、そして北口へ消えていく。
  成美、その光景を呆然と眺めている。

○ 成美の住むマンション・全景(夜)
  雨は小降りになっている。
  全身ずぶ濡れの成美が、帰ってくる。
  入り口の前に、雨合羽を着た洋平が立っている。

洋平「よう!」
成美「!……」
洋平「お帰り。ん? 何で濡れてるわけ。傘持ってるくせに」
成美「……あんたこそ、そんな合羽とか着て、何してるのよ」
洋平「傘差して、原付乗るわけにはいかないからな」
成美「いやいや。なんで、あんたがここにいるのよ」
洋平「花火でもやろうかと思って」

  と言って、コンビニの袋を取り出す。

成美「この雨の中? どうやって? っていうか、なに? え?」
洋平「だって、今日、誕生日だろ」
成美「!……」
洋平「一人より、二人の方が楽しいだろ」
成美「……相手によります」
洋平「俺とじゃ、楽しくないか?」
成美「はあ?」
洋平「俺、こう見えても、けっこう一途だぞ。しかも独身」
成美「えっ?」
洋平「俺とじゃ、ダメか?」  
 
    了


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