オンガク

Sinead O Connor-Danny Boy

貼り付けた音楽を聴きながら、ご一読ください。

いつもそこで目が覚めた。
いつも同じ夢だった。
夢の中身は今でもはっきりと憶えている。
それは赤い風船が見た夢。
遠い昔、その風船は、自由の風に吹かれて揺れる景色の中を飛んでいた。
ゆっくりと。ゆっくりと。
風船はゆらゆらと青空の下を舞っていた。
記憶が、思い出が、赤い空の下で握った親の手の温もりが
みんなみんな溶けていくように、私の身体も揺れていた。
あなたは窓を開けて深呼吸をする。
あなたは顔を洗う。
あなたは部屋の片づけを始める。
電話が鳴る。あなたは急いで受話器を取る。
もしもし。
もしもーし。
もう私の言葉は届かない。
あなたは鏡を見てニッコリ微笑む。
誰でも鏡の中に、自分のもっとも好きな人を見る。
いや、自由を見る。
絶対に開けるなと言われた箱の中身はからっぽだった。
でも私には希望がある。自由の風がある。
冬の空に、赤い風船が浮かんでいた。
私はそれを長い間眺めた。
雲は真っ白で恐ろしく高かった。
また見上げた時
もうそれはどこにもなかった。
(2001年「plastic-jungle」より)


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